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ALONE――ORITO

――告白 ②――




紗江の唇は、何度か開きかけた。



しかし、言葉をつむぐ前に、涙が溢れていく。



「いいのよ、ゆっくりで。――よっぽど、辛いことがあったのね……」



その震える肩に、百合子の白い手がそっと置かれる。



百合子のその手も、微かに震えている。



紗江はしゃくり上げながら、それでも今までのことを、話し始めた。




紗江の話はこうだった。



夏休みに入る前の実力テストで、成績がふるわず、学年主任でもあり、1年のときに担任でもあった佐倉に相談に行った。



暑い夏の日の放課後だった。



生徒指導室の中、最初は普通に、成績表を見ながら話していたのだが、次第に佐倉の眼は、薄くなった夏服のブラウスや、短めのスカートの裾から覗く脚に向けられていった。



いきなりの出来事だった。



何が起こったかわからなかった。



しかし、上に見える天井、圧し掛かっている佐倉の、汗ばんだ身体。耳元で聞こえる息遣い。



何が起きたか理解できたときには、すでに全てが終っていた。



それから以降、そのときに撮られた写真をもとに脅され、いやいや関係を続けていたのだった。



「……誰にも言えなかった。お父さんやお母さん、こんなこと知ったら、どんなに悲しむか、どんなに傷つくかわからなかったし……」



身体を震わせ、泣きじゃくる紗江。



――誰よりも傷ついたのはあなたでしょうに……



百合子はその肩を、しっかりと抱きしめた。



「棚橋くんのお父さんは、きっと、あたしを助けてくれようとしたんだと思います……」



博文が佐倉と紗江のことを知ったのは、偶然だった。



リサーチの仕事、浮気調査の案件。



ホテルの前で張り込み、入り口を撮っていた博文が、佐倉を、そして紗江を見つけたのだった。



『遠藤……さんじゃないか?』



『あ……』



『待ちなさい!!』



逃げようと踵を返した紗江を、すばやく捕まえる博文。



『こんなところで……彼と何をしていた?』



両肩を掴み、揺さぶる博文に、真っ青になった紗江。



崩れ落ちる彼女を博文は抱え、その場を離れた。


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=ACES Ⅴ 110=

――living through hell ④――


亜美と房子の悲鳴が響く。

男たちのげらげらとした笑い声が響く。

布の裂ける音が響く。

頬を平手打ちする音が響く。

――やめて、やめて、ママ、助けて

――お願いです、やめてください、その子を離して

――いや、いや、痛い、やめて、痛い、痛いぃ

――お願いです、わたしが代わります、わたしがその子の代わりになりますから

泣き叫ぶ2人をあざ笑うかのように、男たちの手は、止まらない。

ぐちゃぐちゃとした粘着質の水音が響く。

――いやあぁぁ、もうやだぁ

――お願い、やめてえぇ、亜美いぃ

代わる代わる、房子を押さえる手。

代わる代わる、亜美をなぶる手。

――やめっ……て……苦し……い

――亜美っ やめてっ、何するんです

亜美の細い首に、誰かが手をかけた。

――へへっ、やっぱり、この方が締まるぜ

――おまえも好きだな、そういうの

――オレも後で、もう1回、それでやろ

動く男の背中を見下ろしながら、別の男が自分の番はまだか、というように靴でその背中を押している。

――早くしろよ、何、頑張ってるんだよ。普段、早ぇくせに

――何だよ、おまえはそっちでやればいいだろ

――ちぇっ……いいか、噛むんじゃねぇぞ

そして苦しそうな亜美の咳き込みが聞こえ、苛立った男の舌打ちと、また頬に当たる手の音が聞こえる。

げらげらとした笑い声と、血を吐くような叫び声が響く室内。

狂宴は生贄をいたぶりながら、いつ果てるともなく続いていった。

「……亜美」

あの電話の後、マスコミとの約束をすっぽかし、血眼になって亜美と房子を探した圭吾。

匿名の通報により、ようやく手がかりを伝ってたどり着いた場所には、涙や鼻水、血液、そしてありとあらゆる体液に塗れ、すでに冷たい肉塊と化した娘と。

「房子! 房子っ」

ぼんやりと座り込み、圭吾の呼びかけにも焦点の合わない眼であらぬところを見つめている房子がいた。

力が抜けたように座り込む圭吾の耳に、遠く、救急車とパトカーのサイレンが聞こえてきたのだった。


~sweetest~ エピローグ(最終話)

-予感-




街を歩く鈴とかずほ。



少し後ろから歩いていく天音と亮輔。



ウィンドーの中に、目を引くものを見つけると、楽しそうに笑いながら少女2人は覗き込む。



子猫が2匹、じゃれあっているようで、なんとも愛らしい。



愛しそうに微笑いながらそれを見つめる少年2人。



あるウィンドーの前で、少女2人が立ち止まる。見上げるその眼は、憧れに輝いている。



「綺麗だね・・・。」



「うん、綺麗。」



少女はお互いの顔を見合わせながら、くすくすと笑っている。



「どうした?鈴。」



「かずほ?」



後ろに立った天音と亮輔。2人の見ていたものに、その笑顔の理由がわかる。






真っ白なドレスとタキシード。輝くティアラ。美しいブーケ。いくつものデザインのそれが、ウィンドーに飾られている。






・・・近い将来、君の隣で、これが着れるかな?





・・・近い将来、君が隣で、これを着てくれるかな?





それはまだ口にしていない未来への約束。



幸せの予感。



いつまでもいつまでも。



君が笑ってくれるように。







「・・・・・・絶対ぇ、うちのハニーのが綺麗だっつーの。」



「あぁ?手前、ふざけんなよ。鈴のが可愛いに決まってんだろ。」



「・・・かずほ、2人は放っといて行こう。」



「そうだね、ちょっと恥ずかしいや。」





・・・・・・まだまだでしょうか?











                                                      -END-

~sweetest~ AMANE

-朝-




何度抱いても、止まらなかった。



しなやかな身体に溺れそうだった。



どっちが先に眠っちまったんだろう・・・覚えてねぇ。



眼を覚ますと、鈴がいなかった。



シャワーの音が聞こえているから、浴びているんだな・・・とぼんやりと思った。



オレも、もう少ししたら、浴びてこようか。



・・・それにしても、身体と頭の重さがハンパじゃねぇ。



でも、いやな疲れじゃねぇ。



枕もとのタバコを取り出し、火をつけて深々と吸い込んだ。煙を吐き出しながら、軽く額に手をあてる。



ちゃんと抱き合えたのか、少し不安だ。・・・つい、夢中になって、突っ走らなかっただろうかと思い返す。



・・・こういうとき、男はホント、情けねぇ。無理をさせなかったか、傷つけるようなことはなかったか・・・あんなに我を忘れて女を抱いたのは初めてだった。



鼻をくすぐる香りがしてきた。



・・・・・・ああ、コーヒー淹れてんのか・・・・・・。



なんか、いいなぁ・・・こういうの。



オレはゆっくりと伸びをして、ベッドから這い出した。そして脱ぎ捨てたままになっていたトランクスとズボンを履き、台所へと向かった。





「鈴。」





振り向くのは、恥ずかしそうな笑顔のお前。



いつものように、手際よく朝食を作っている。



おはようの代わりにキスをおとす。



「・・・シャワー、浴びてくる。」



「うん。」





無防備な背中。あのときとちっとも変わってねぇ。



また、匂い嗅いでやろうかな。

~sweetest~ RING

-朝-




・・・いつの間に、寝てたんだろう・・・。


天音の腕の中で、あたしは眼を覚ました。



隣から規則正しい寝息が聞こえてくる。胸から伝わる鼓動も、とても穏やかだ。



・・・なんだか、体中がしびれているようだ。



でも、いやな感じじゃない。・・・甘く、甘くしびれている。



ゆっくりと腕をはずそうとしたら、かえってそれは強く絡み付いてきた。



・・・どうしよう、なんだか笑ってしまいそう。



うれしくてうれしくて。



天音が大好きで。



本当は不安だった。・・・大事にしてくれているのはわかっていたけど。



あたしを気遣ってくれていたのはわかっていたけど。



“もしかしたら”って。



“やっぱり、いやなんじゃないか”って。



・・・あたしは今でも、たまにあのときの夢にうなされる。



こらえきれない恐怖。嫌悪感。怒り。悲しみ。憎しみ。絶望・・・。



すべての負の感情が爆発する。吐いたことも、1度や2度じゃない。



そんなあたしが“かわいそう”だから。



そばにいてくれるんじゃないか、って・・・きっと天音に言ったら、



「あぁ?ふざけんな。」



って怒られそうだけど。



それに、自分がちゃんと、受け入れることができるかどうかも・・・とても不安だった。賭けのようなものだった。



これからちゃんと、一緒にいられるかどうかの・・・。乗り越えていけるかどうかの・・・。






少し腕の力がゆるんだから、あたしはゆっくりベッドからでた。



・・・腰が痛い。・・・そしてこの下半身の違和感はなんだろう。足が閉じてるのに、閉じきっていないみたい。



床に落ちたパジャマを拾った。でも、パンツは見つからなかった・・・。



さぁ、熱いシャワーを浴びて、身体を起こそう。



そして、コーヒーを淹れて、朝食を作らなきゃ。






天音が起きたら、どんな顔をしたらいいのかな



いまから心臓が暴れだしてる




胸元には小さな赤い花びら。



たくさんのその跡が



うれしくてうれしくて・・・涙がとまらない。

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