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=ACES Ⅴ 110=

――living through hell ④――


亜美と房子の悲鳴が響く。

男たちのげらげらとした笑い声が響く。

布の裂ける音が響く。

頬を平手打ちする音が響く。

――やめて、やめて、ママ、助けて

――お願いです、やめてください、その子を離して

――いや、いや、痛い、やめて、痛い、痛いぃ

――お願いです、わたしが代わります、わたしがその子の代わりになりますから

泣き叫ぶ2人をあざ笑うかのように、男たちの手は、止まらない。

ぐちゃぐちゃとした粘着質の水音が響く。

――いやあぁぁ、もうやだぁ

――お願い、やめてえぇ、亜美いぃ

代わる代わる、房子を押さえる手。

代わる代わる、亜美をなぶる手。

――やめっ……て……苦し……い

――亜美っ やめてっ、何するんです

亜美の細い首に、誰かが手をかけた。

――へへっ、やっぱり、この方が締まるぜ

――おまえも好きだな、そういうの

――オレも後で、もう1回、それでやろ

動く男の背中を見下ろしながら、別の男が自分の番はまだか、というように靴でその背中を押している。

――早くしろよ、何、頑張ってるんだよ。普段、早ぇくせに

――何だよ、おまえはそっちでやればいいだろ

――ちぇっ……いいか、噛むんじゃねぇぞ

そして苦しそうな亜美の咳き込みが聞こえ、苛立った男の舌打ちと、また頬に当たる手の音が聞こえる。

げらげらとした笑い声と、血を吐くような叫び声が響く室内。

狂宴は生贄をいたぶりながら、いつ果てるともなく続いていった。

「……亜美」

あの電話の後、マスコミとの約束をすっぽかし、血眼になって亜美と房子を探した圭吾。

匿名の通報により、ようやく手がかりを伝ってたどり着いた場所には、涙や鼻水、血液、そしてありとあらゆる体液に塗れ、すでに冷たい肉塊と化した娘と。

「房子! 房子っ」

ぼんやりと座り込み、圭吾の呼びかけにも焦点の合わない眼であらぬところを見つめている房子がいた。

力が抜けたように座り込む圭吾の耳に、遠く、救急車とパトカーのサイレンが聞こえてきたのだった。


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